第6回サバニ帆漕レース


古座間味でスタートを待つサバニ




「海想」と兄弟舟のチーム「バッカス」


スタート前のクルー


偵察に訪れた「陸人」の艇長


サバニ大工の新城氏




各チームセッティングに大忙し




水中から見たサバニ


60人前のカレー


前夜のミーティング


朝早く那覇から来たギャラリー


賑やかになってきたビーチ


レースはどうなるのか


コース変更により作戦の練り直し


帆の向きを入れ替える


絶妙のスタートダッシュ


次々漕ぎ出すサバニ


風と波に逆らって必死に漕ぐ


コース間違ってない?


出番を待つクルー


いよいよ帆を上げる


慌ててコース確認


追い風に乗ってスピードアップ


追い波で右往左往することも


すれ違うヨットからも熱い声援


ブイが見えてきた


歓喜に沸くクルー


レース後師匠との固い握手


優勝カップ授与


応援の協大丸



海想の最大の年行事となった感のあるイベントの日がいよいよ近づいてきた。
今年の特徴は新艇のサバニでエントリーするチームが多いということが言えるかもしれない。しかも過去に優勝を経験したチームや優勝を狙えるチームばかり。 他のチームの殆どが古いサバニを譲ってもらいリニューアルしてのエントリーに対して海想を含め、こうした新艇でのエントリーはやはり有利なのだ。 古いサバニとはいえ帆で走るために作られたサバニはさすがに無くエンジンを乗せていたものばかり そのためにどうしても重い レースは風と人の力だけで進まなければならないために早く走るためにはサバニそのものが軽いと言う事が絶対的に有利となる。

私たち海想はこの有利な条件でのエントリーのために過去のレースにおいていい成績を収めてきたということが言えるのかもしれない。このレースの目的が沖縄に伝わる海の文化を継承するというところにあるのだから、朽ちかけようとするサバニを復活させ、再び海に浮かべる意義は大きいものがあるだろうし 新しいサバニをサバニ大工に発注すこともまた大きな意味をもっていると思う。
古いサバニが手に入りにくくなっている最近では新たなサバニを造る方がもっともっと増えてきてほしいと願う。


レース実行委員会からエントリーの申し込みが届いたのをきっかけに本格的に準備に入った。
まずはクルー 昨年のクルーは今年もまた海想のクルーとして名を連ねてくれるのだろーか?昨年の表彰式の場で 来年も、この場で同じメンバーで乾杯しよう! このことを確認するために連絡をとる 「一年間この日を待っていました!」 との熱いメッセージと共に連絡を入れたこの日にメンバーは決定 女性 3名を含む 10名 内 5名は海想のスタッフ 1補欠 今年もまた 優勝を目指すチームとはとても思えない顔ぶれ レース前日優勝候補のあるチームが海想のサバニを見ながら「どうしてこのチームに負けるのか?納得がいかない。エンジンでも付けているんではないかと今見に来ているんだ!」と冗談をいっていましたが、たしかに選りすぐりのメンバーで人選したつもりはない今年もまたあくまで基本は海想のスタッフが中心 ただ よそのチームと同様に私たちもまた早く走るための努力は惜しまないつもりでがんばってきたつもりだ。レースを最大限に楽しむためには大会が始まるまでの日をどう過ごすか にかかっていると私は思っている。 1位になるとか是が非でも優勝してやる というような気負いは正直ない もちろんレースと名のつく以上は早く走るための最大限の努力はしなければならないだろうし、それがレースに参加するための礼儀だと思う。
サバニが座間味に送られていく約2ヶ月が自分にとっては、もっともかけがえの無い至福の時間のように思う。 結果は それに費やした時間が間違っていなかった という確認のような気がする。

練習は毎週日曜日 大会一ヶ月を過ぎてからは土曜 日曜 も練習日とした。 例年に比べて今年は新たな準備をほとんどすることなく練習に専念できた。 いつもの年なら マスト 帆 エーク アウトリガー サバニ本体といろいろいじるところだが、私たちの中ではこれらの準備はほとんど完成されたと思っているために、工房の中がカンナをかける音や木工機会の音で、にわかに賑やかになるはずが、シーンと静まり返って、ちょっと寂しい。その分、練習に専念する事ができクルーのレベルは着実に上がっていると思う。練習のフィールドも東は辺野古や嘉陽 西は水納島や海洋博記念公園の近くまで遠征した。レースの距離と殆ど変わらないか中にはそれ以上の距離の時もあった。 1日漕ぎっぱなしの日を経験するとレースとはどういうものなのかを身をもって経験するため、このハードな一日は後の練習に参加していない日をいかに過ごさなければならないのかを無言のままに教えてくれる。
今年もまた自分なりには満足できる準備ができたと思う。


《座間味入り》

大会4日前から座間味に入る。 座間味に着いてからはサバニの準備と言える準備はほとんど無く、あるとすれば前日に大挙して入ってくる応援隊の受け入れ準備 海想のスタッフを初め、出来れば可能な限り見せたい サバニを体験させたいと言う思いから、こちらの方の対応に追われる。
前日はクルーと応援 合わせて20人 当日 那覇 恩納村からの伴走船の応援を含めると50人を超える大所帯 そんな中でも暇を見つけては他のチームのサバニや道具を見て回る。私にとって早く座間味に入る最大の楽しみにして目的はこれだ。特に今年は新艇が多い 先にも述べたように、この大会をきっかけに今にも朽ちかけようとしたサバニがどれだけ復活したか知れない。沖縄中出かけていっては何隻も復活させているチームもいる。また私たち海想のチームのように新たなサバニを発注するチームもにわかに増えてきている。ほんの30年ぐらい前まではサバニを作る木工所は各地区にあったという、本場の糸満でも10件を越えたと言われるが、現在では各の如くである。このレースの果たした役割はそれだけに留まらない。私を含めサバニがその昔 帆で走っていたことなど、このレース無しには思いもつかなかった人も多いのではないだろうか? ハーリーの各地区の夏のイベント とのイメージがつよいが、このレースをきっかけに本来のサバニとはを教えてくれたような気がする。40艇近くのサバニを一同に見れることなど、このようなイベント無しでは到底かなえられない。


《大会前日》

今年は例年に比べて入梅が早く春先から雨続きだったために、期待を込めて、今年の梅雨明けはきっと早いだろーと、誰もが噂していたのが、見事に期待を裏切り いよいよ明日 という日になっても、どうもすっきりしない天気だ 何しろ風が強い 風で走る「帆カキサバニ」であるのだから風が吹いてくれないと、それはそれで困るのだけど、大会が危ぶまれるほどの風は勘弁してもらいたい。
天気予報も今回だけは外れてくれーと、願うコンデション 実行委員会からは開催の最終判断は大会当日に判断することが報告され、とにかく那覇まで行く事の前提は変わらない事が伝えられると、集まった各チームから一斉に拍手が興る。 やはり皆、那覇まで行きたいのだ。 そしてこの状況は予断を許さないことも誰に聞くまでもなく知っている。 艇長会議が終わって上を見上げると相変わらず低い雲が北へ向けて走っている。 とにかく私たちが、やるべきことは何の疑いも無くモチベーションを保ち明日に備える という事だけだ。

例年どおり大会前夜スタートのクルーを決める 最初に乗り込むメンバーは6名 10名のクルーの内4名は交代するときまで伴走船で待機ということになるが、いつもの年ならこのスタートの選考は、もっともパワーのある人を優先していたが、今年はあえて海想のスタッフを全て(5名)入れて、なお後の一人も女性とした。 理由は勝つということを最優先にしていない 事を意識しての事だが、もちろん そうは言っても戦略を全く無視している訳では無い。 潮 コース 風 クルーの体力も考えてのことは言うまでもない。


《大会当日》

早朝5時起床 朝食も早々に古座間味に向かう ほとんどのチームはまだ見えない 風は必要以上に今日も元気だ。 しばらくして那覇と恩納村からの伴走船が着く。 伴走船から海上の様子を聞くと状況は芳しくない。後は実行委員会の英断に頼るしかないようだ。 実行委員会の主要メンバーはヨットを長く経験している、いわば海況を判断できるプロ達ばかりだ。 きっと このぐらいの風で中止なんてできるか などと威勢のいい言葉を言い放ち 那覇まで行くだろー 根拠のない期待と共に8時のスタートを待つ。

7時過ぎに各チームの代表が集まってほしいとのアナウンスが入った。
そしてコース変更が知らされた。思ってもいなかった事態だ 前もって悪天候の場合のコースの説明は受けていたとしても、私の頭には、このコースは全く入っていなかった。しまった 3日も座間味にいたにもかかわらず、この事を一切気にも留めていなかった。私たちは二隻の伴走船のほかにサバニと一緒にゴムボートも座間味に運んでいた。潮の確認に渡嘉敷島のジシップ島にも気軽に行けるフットワークを持っていたにもかかわらずである。レースはあらゆる状況を想定して準備しなければならない。
その準備が細部にまで行き届いているかどうかで、ほとんどの勝敗は決する と私は常々思っている。
そういう意味では今回は幼稚で基本的なことが、抜け落ちていた。大会関係者のコースの説明を聞き、初めて聞く曾根の名前にボーゼンとしながら、今更慌てても仕方がない、とにかく走って行ったら何とかなるだろー 最初にコーナーに辿り着くのは私達海想とは限らないのだから、自分の無能さを悔いても始まらない 直ぐにクルーに帆の位置を変えるように指示を出す。 那覇までのコースは右からの風を受け帆がはらむようにセットしている コース変更になった今回は向かい風を進んだ後はほとんどのコースは左よりの風になる。充分な風を受けるためには帆を入れ替える必要がある。

スタート時間は9時 この時点で戦略を変えることにした。 前日のミーテングでは海想のメンバーを中心に、ということだったが、短いコースと強い向かい風のためパワーを中心としたメンバーに変更 その後はその場の状況に合わせる コースは最短コースで行く、メンバー変更の提案も最初に乗るクルーからの提案だったためか誰一人異論をとなえるものがいない。一人を除いて何一つ迷いは無い スタートの合図を待つ 外には伴走船が待機 各チーム毎に一艇の伴走船がつかなければならないことになっているため今回出場したサバニ39艇 それぞれに付き 中には伴走船を二隻 準備しているチームもあり 大会関係のボートを含めると総勢100隻を超える大移動ということになる。

スタート前のわずかな時間も惜しんでスタートの準備 誰がどの位置に どのタイミングで入るかを細かく決める。 私たちのスタート位置はNo.にして2番 最も外側に位置しているためスタートでつまずくと最悪の場合、他の艇を一艇一艇かわさなければ前に進めない状況に追い込まれる事も考えられる。それだけは避けなければならない。まずは第一の関門はスタートダッシュ。

スタートの合図と共にいっせいにサバニに向かう 風と波が舟の舳先に真っ直ぐに向かっている。
二つ目か三つ目の波で抜け出る事が出来た。ラダーを入れた後はタイミングをみて帆を降ろす。
この風では抵抗になるだけで帆を降ろすのが早ければ早いほど有利となる。
帆を降ろすと後は6人全員で何も考えないでただただ漕ぐのみ 昨年 私たちは向かい風で優勝できた ということは自分たちが意識しているか否かにかかわらず 漕ぎは得意なチームと言うことが言えるのかもしれない。(単にサバニの能力が優れているという話もあるが)横に見えていた相手のサバニが後ろに下がった。スタート5分で4〜5艇がぴったり後ろについている。 ここから先がなかなか放すことが出来ない。まだまだ先に見える立標だが、そこを過ぎると帆で走ることが出来る。相手の帆で走る能力がどのぐらい優れているのか分らない以上ここで離せるだけ離したい。 不気味だったのは左に大きくコースを取っているチームが目に入った。海想との距離はかなり離れていると言ってもあそこからなら風を受けてこっちに走ってこれる。漕ぎだけで進む、ほとんどのチームをよそに予想だにしなかったコースを走っている そうか そういうコースもありかー どのチームか分らないままに変に関心していた。もしかしたらあそこからだと風に乗ってここにこれるかも、どうも気になる。

結局 最初のコーナー(平瀬)は私たち海想が制した。 後ろについていた何隻かはいつの間にか大分放していた。そのうちの一隻が私たちが今まさに立標を超えようとしている時コース変更をしている。
クルーも交代を待つゴムボートクルーもそして伴走船で応援している人たちも えー
私たちが間違っているのか、相手がミスしているのか 後ろに付けている残りのサバニはいずれも、こちらの方に向かって走っているところを見るとどうも向こうの方がミスしているように思えてくる。
問題はこの先だ ここから真っ直ぐゴールに向かうべきか 南の方向に見えるもう一つの岩を超えるコースなのか、頭では南に向けてもう一つ回るポイントがあったように思える。
実行委員会から渡されたルールブックには確か三角のコースが描かれていたように記憶している。このままゴールに向かうコースだと三角とはなりにくい とりあえず確信を持てないながらも、遠回りのコースを取りつつ、ゴムボートにコースの確認をしてもらう レース関係者のボートを探して確認してくれと頼む 帰ってきたゴムボートは「艇長に説明しているから艇長に聞いてくれ 教えられない」のだそうだ。レース委員会から渡されたコース変更の用紙を伴走船につんでいたため、この近海の名前をよく知る船長から確認してもらって、今走っているコースに間違いがないことがやっと確認できた。
やれやれだ コースの角度が変わったことで、わずかながら風を受けて走ることができる。すぐに帆を上げる。さっきまでもスピードより格段に早い ということは今まで離している後ろのチームもこの風を受けて差をちぢめられる可能性だってある。 油断はできない 海想の帆の能力は未だに未知数なのである。 後ろを見るとすでに立標を過ぎているはずなのに帆を上げる様子がない どうしてだろー?

名瀬を過ぎる頃には後ろのサバニの存在が確認できない。ここを過ぎると、うねりも大きくなり風も追い風となる。スピードに乗ったサバニでクルーの交代をするとしたらここしかないと判断して最初にして最後の交代をこの名瀬とした。 第二のコーナーを過ぎると気持ちいいほどにスピードに乗った。大会初のコース変更を余儀なくされるほどの風である。スピードが出ない訳がない たまに大きいうねりに舵が利かず右へ左へ大きく揺れる 後ろを見ると白い帆が見える
見覚えがある帆だ。 幾らなんでもここから追い越されることはないだろーと思われる。 阿嘉島の山を超えなおもこの風は衰えを知らない。はらんだ帆から伝わるロープが手に食い込む 身体全体で目いっぱい引き込み なおもスピードを上げる。この数日間落ち着いてくれーと祈りつづけた風を、今は、もっとふけーと最高に楽しんでいる。マストもマストを支えるウシカキもギーギーと唸りを上げる。
ロープで支えをしていないマストは弓のようにしなる それでも折れるもんなら折れてみろととばかりに力の限り引く それでもこの程度の風ではびくともしないことを知っている。 以前 このサバニがどの程度の風やウネリに耐えられるものかテストしたことがある。マストを2本折ったりもした。
転覆を覚悟で荒れた海に出たこともある。サバニの限界とはどの程度のものかを知りたくて、結果は転覆することはできなかった。驚いたことにどんな波でも身体への負担がない。だから私たちはマストを支えるロープをとることはしない。マストがしなって風を逃がすことはあっても折れる心配などほとんどないと思えるからだ。安慶名敷過ぎたあたりでやっとブイが見えてきた 頼りない艇長によって、基本中の基本であるコースさえ把握されていないにもかかわらず、何とか恥を掻かずにゴールできそうだ。後ろを見ると座間味丸の帆が見える。こころなしか差は縮まっているようだ。
が 今となっては何があっても追いつかれる事はないだろー マークのブイがはっきり見えてきた。
あのブイを回り込めばゴールは目の前のはずだ。強い風ながらも単調な直線コースからコーナーに差し掛かる最もダイナミックで見せ場とも言えるところに差し掛かる、ヨットレースのごとくマークのぎりぎりを回り込む つもりが風に流されてうまくいかない。結局 何のへんてつもない ターンとなった。

後ろの方で、思いがけなく大きなホーンがなった。

「えっ」 「なにっ」 ゴール?

携帯で確認をとる ブイを回ってところがゴールと分かった。
あっけない幕切れだった。ゴールしたのが分かった時は、安慶名敷島近くまで来ている。
よく見ると観光客が手をたたいて私達を祝福してくれている。
あー今年も 終わったー


今年は海況の影響で座間味近海で行われた。あの状況では、いた仕方なかったのではないだろうか、むしろ中止にしなかった英断に拍手を送りたいと思います。
また大会前は何として那覇まで行きたいとの思いでしたが、今回座間味近海を経験して、座間味近海でのレースもなかなかいいかもしれない!と思えてきた。座間味の海で数日を過ごしレース当日那覇へ向けてスタートする 那覇へ近づくにつれて海の色がどんよりと濁ってくる。そしてどこか心も濁ってくるのだ。 それなら、いっそのこと慶良間周辺だけのでレースを行ってもいいのではないかと思えてくる。楽しいだろうなー
 村長 よろしくお願いします。



                          文:海想  森 洋治



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