第5回サバニ帆漕レース





































































































































海想としては2回目の参加となる今年ついに優勝することができました。昨年は初参加で2位という好成績で参加した私たち自身驚く結果でした。手探り状態の昨年は、とにかく参加することが最大の目標としていたが、今年は準備にも余裕ができ、結果として最高のゴールを切ることができました。
ここでは、その模様をお伝えできればと思います。



大会に向けて動き出したのは、4月も半ばを過ぎてからだった。
まず、大会に向けてあらかじめ前回同様 目標を定めた。

    「楽しく さわやかに トップを目指す」

何を置いても、まず楽しくやろう このようなすばらしいイベントに参加できる喜びを皆で共有し、サポートしてくれる関係者 スタッフに感謝し 精一杯楽しもう、レースと名のつく以上、勝つための準備は、やれるだけのことはやる。だけど このことだけを最優先にしては、何のための参加か見えなくなってしまう第4回 大会の表彰式でナイノア・トンプソンさんがスピーチした言葉を心に留めたい。
「私達が最初にゴールしたことが価値あることではない、私達は先祖から受け継いだ、すばらしい海の文化を、これからも受け継ぎ、誇りを持ち続けることが、最も価値あることだと」

昨年は初エントリーにしていきなり2位という好成績でしたが、実態は1位との差は、遥か前方に、その姿を確認できないほどの距離だった。 今年はこの距離をどう攻略するか? をテーマに全ての事を徹底的に見直した。 ハーリーレースのように数分で決着する場合はクルーの能力に頼るところが強いと思われるが、トップでも4時間を超える長丁場のこの帆漕競技では、全ての部分は大きな差となって現れる。 このレースの最も特徴的で難しくも、魅力的なところではないだろうか。

今回の大会に向けての準備を分けると次のように分けることができる
@クルー&技術  Aサバニ&道具  Bコース&コンディション


1 クルー&技術

近年の優勝チームを見ると、漕ぎに絶対の自信を持つチームが、いずれも上位に入っている。 昨年 は漕ぎのスペシャリストが優勝をさらった。帆漕レースはその日の風の状況によって大きく変わってくる。 風が無い、もしくは弱い場合は、やはり漕ぎを得意としたチームが有利なことは間違いない。 風頼りのチームではそれだけで大きなハンディとなる、準備はどういう環境でも対応できるようにしなければならない。
昨年以上にクルーの能力を上げるべく、海での練習を長時間の「漕ぎ」の練習に時間を費やした。 練習のフィールドは名護湾 ここはどこの風が吹いても時化のために練習が中止になることはほとんど無い また海岸線を行ったり来たりの単調な往復と違って、名護湾 横断という、クルーにとってはとても楽しい練習ができる環境に恵まれている。
例えば、今日は出発地点のビーチから、5
K先 湾を越えて、国道58号線の通称七曲の道の駅まで、往復10Kのコース クルーの数が揃うと、ちょっと遠出して8Kコース 往復 16K 名護市幸喜ビーチ、ここで水分補給とエネルギー源にコンビニでソフトクリームを調達するのが恒例となった。この他に喜瀬ビーチ サミット会場になったブセナ岬のコースがある。いい風が吹いているときなどは帆を上げ、本部半島付近まで足をのばす。
昨年はこの帆の操作を覚えるため、多くの時間を割いたが、今年は楽しむためのものとなった。昨年のメンバー
7人の内 5人が残り、さらに5人のメンバーが加わった。

内訳は海想のスタッフ4名 昨年からのメンバー1名 友人3名 友人の紹介2名 ゴムボートクルー1名 (友人)という布陣 職業もパラセール ライフガード 学生 ダイビングインストラクター 海洋カメラマン シーカヤック そして海想のスタッフ といろいろだが、学生を除けば殆が海に関係する仕事を選んだ人たちばかりだ。たしかなことは昨年同様メンバーになっているクルーを含め、クルー全体の能力は格段に上がっていること、さらに誰が説明するまでもなく、クルー全員が今回のサバニレースとは、どういうものかをよく知っている。クルーの能力を上げる最も有効な方法はすでに備わっている。



2 サバニ&道具


ここでは個々の説明は省くことにします。

先にも話しましたが、昨年との優勝チームとの差は20分 もし同じチームが参加すると仮定しても、さらにレベルアップしてくるだろうから、優勝を狙うチームと競うには昨年の私たちの能力より、さらに30分以上のスピードアップをはからなければならないことになる。となると、多少の手直しだけでは、この30分の壁は埋まらない。 全ての事を一から見直す事とした。 今回の準備と前回の準備とでは、一見何も変わっていないように見えるかも知れないが私たちの中では、全てが変わったと思っている。

名護湾のフィールドの好環境と同様に、私達にはサバニを補修するだけの十分な施設や道具が揃っている、本業の「造る」ための工房がそれだ。ここでは、フィールドで問題になった箇所、道具がよりパワーアップして次の練習に出て行くことになる。

レースの日が近くなる頃には、前回、上位チームのトラブルも重なったとはいえ、どうして、あれで2位になれたのか と思えるほどに完成された状態で開催地 座間味に送り出すことができた。 今回は前回優勝したハワイ混成チームは参加しなかったが、結果はどうあれいいレースが出来たのではないかと思う。



3  コース&コンデション


大会当日、スタートを待ちわびるクルーやギャラリーが古座間味に集まった。沖には数艇の伴走船とかつて無い賑わいをみせる。42艇ものサバニがビーチ沖のスタートの合図を待つ。 スタート10秒前からはクルーを含め、ここに終結した全員でカウントダウン
  
    10、9、8・・・3、2、1 スタート

第一の目標である通称灯台下まで、一直線に進む。 心配していたサバニどうしのぶつかり合いもなく、上々の滑り出しだ。 スタートの合言葉は「山を作る」 スタートから一気に抜け出し、山の如く何ものにもジャマされないように抜け出そう。 とりあえず、可能かどうかは別として、イメージをつくった。 思いがけずイメージどうりの展開となった。


少しスタートの慌しさが収まったころ回りを見回してみる。左の方向に明らかに私達より前方をグングンスピードを上げて走っているサバニにが数隻、目に入った。クルーも気になっているのか、漕ぐペースがさらにあがっている。いくら何でも、これではすぐにバテてしまう、交代はまだまだ先 第2コーナー 渡嘉敷島北端のジシップ島あたりを予定していたから、まだ時間にして50分以上あることになる。 左のサバニは気になるが、ここは一段ペースを落とすことにした。
相変わらず左前方を行くサバニは快調に進んでいる。この時点で私達はおそらく2位ないし、悪くても4位以内には入っていると思われる、いずれも左側に位置しているサバニに先行を許している状況はタイム的にはほとんど変わらないか、むしろ有利な展開かもしれないと思い始めてきた。 現にペースを落としたはずが、差が広がるはずが一向に変わらないどころか、むしろ近くなっているようにさえ感じる。 私達は那覇までのコースを8段階に分け、その進路と予想タイムを細かく分けていた、その最初の一段階が灯台下ということになる。 ミーティングでは最初のコーナーを制したチームがこのレースの優勝者になるだろうと思っていた。だからか、このコーナーまでのスタートのペースは心臓破りの山を登っているような勢いだった。


結局 最初のコーナーを最初に抜け出ることが出来たのは私達、海想のチームだった。
「トップだ トップだー」とライフガードの吉田君が叫んだ。 「よっしゃあー行け 行けー」と学生のあきらがそれにつづく。スタートの緊張感から開放されたサバニの中は一気に和む、伴走船と交代クルーのゴムボートは灯台下を過ぎても、まだ来ない。前回はたしか、この辺りでクルーもバテテきて交代したあたりだが、誰一人疲れている様子は無い、ペースが落ちないまま、たまに雑談が飛び交う余裕さえある。しばらくしてやっと伴走船とゴムボートが追いついてきた。 ゴムボートのクルーは、はやる気持ちを抑え今か今かと交代の合図をまっている。 伴走船は思いがけずトップになった事にいっそう盛り上がり大きな声援が飛んでくる。


後ろを見ると地元チームの座間味丸と沖水号が見える。差はさらに広がっているような気がする。渡嘉敷北端のジシップ島を越え、スタートから1時間を過ぎたあたりで一回目の交代、このあたりから多少うねりが入ってきていたが、何の問題もない、むしろ単調な海よりメリハリがあって気持ちがいいぐらいだ。
予定のコースではジシップ島コーナーを過ぎ、黒島を左に前島との一直線のコースを予定していた。ところが思いがけず潮が南に走っている。黒島の南にリーフを知らせる立標が立っている、ここを右に見ながら予定どうり潮に逆らって進むか? 無理に舵をきらずに。この流れに沿って進み、結果 立標をかわす事が出来なかったら、右回りで行こうと決めた。事前にクルーにはコースの内訳を伝えていたが、コース変更の知らせはしなかった。 誰もコースの変更を気にとめているよう様子が無い。潮は治まる様子はなく立標の右側を通る事とした。
後方を見ると同じコースを取っているように見える。どのサバニか確認出来ないが、恐らく座間味丸と沖水号だろう 沖水号は第一回大会からの参加で、過去4回全て上位に名を連ね優勝経験もある強者 昨年はトラブルで4位に終わったが、そのトラブルが無かったら私達海想は遥かに及ばない、優勝をもうかがう前方を走っていた。

座間味丸は地元座間味島出身で結成された強豪で、前回この座間味丸を何とか抜いて二位となったいきさつから、今回は海想だけには負けない!と強い意識で挑んでいる。クルーどうし知り合いということも一層、ライバル心に拍車をかけているのかも知れない。
前評判も大会前からナンバー1 クルーにはダイビングショップを経営する慶良間の海を知り尽くした人達だ。2艇とも前方を走っているコースに習ってをそのまま走ってくるようなチームではない。コース変更のわずかな不安もこれで晴れた。



このまま流れに乗って立標をかすめるように進んだ。(この判断は今でも良かったのか分からない) 時折 大きいうねりがサバニをかすめていくが、予想以上にいとも簡単に乗り越えていく、快調そのものだ。 次の目標は前島北端、このまま行くと私達は本当に優勝してしまう。本当だろうか? まてよ、どこかに落とし穴はないか?
アウトリガーの支えは緩んでいないか。あか抜き用の栓がしっかり絞まっているか。普段なら気にも留めないようなところにまで確認する。どこもこれといって問題はなさそうだ。 風はあいも変わらず東風 スタートの時点こそ帆を上げてはいたもののこの風では抵抗になるだけ、ジシップ岬の手前で帆を降ろしてから、前に進む方法としては、ただただエーク(櫂)を漕ぐ コグ こぐ だけ 今回は練習の賜物か、誰ひとり疲れた様子もなく、むしろジャンケンをしてまで乗るメンバーを決めるほど、体力的な余裕があった。

前島の北端に差し掛かった。細心の注意を払いリーフのギリギリを走る。わずか
2メートル足らずの水深を進んだ。すぐとなりでリーフに砕ける波を見ながら息を呑むような透明度に ウワー ウワー と声にならない声、全員沖縄に暮らしているはずなのだが、ここのは特別だった。ほんのちょっとだけここに留まりたいと思ったのは私だけだったろうか?
ここを過ぎると目立った目標物は無く沖縄本島の霞む山並みを見ながら、単調な景色となる。時折 飛行機が徐々に高度を下げて進んで行くのが見え空港の場所はあの辺だろうと想像がつく この辺りから大会関係者のボートや報道関係のボートが集まりだしてきた。いよいよ 優勝の二文字が現実のものとして意識し始めることになる。


大会前日の艇長会議で明日は東よりの風になる見込み レース中にゴールの変更があるかも知れないことを、予め知らされていた、その知らせが届いた、通称チービシと言われるところが今回のゴールと決まった。一番南に位置するクエフの南にボートが停泊 そのボートを南端として北側がゴール。ゴールの瞬間を撮ろうとメディアのボートがどんどん近づいて来る。「帆を上げて下さい。」 「ゴールの瞬間はボートの近くを通って下さい!」いろいろ注文が飛んでくる。

ヨットに乗った主催者のスタッフが右手を大きく上げ梅雨の明けた沖縄の夏空に向けて高らかにホーンがなった。 夢の
3時間半は あっという間に終わった

ゴールした後に座間味村長からスイカのプレゼントを受けた。昔 座間味島から那覇まで、このサバニでスイカを運んでいたという。座間味島のスイカは格別美味しく昔から高値で取引されていたそうだ。村長はこんな歴史を思い現在に甦らせている サバニは今も昔も人々の精神的な支柱に成りうる存在なのではないだろうか? 
頂いたスイカを、乾いた身体に吸い込ませるが如くムシャブリつきながら、なるほどたしかに甘くて美味しい、近い将来座間味のスイカが私達の手の届かない高値になる前に、今のうちにいっぱい食べておこう。

この時期には珍しく東風から北も入ってきた。台風の影響が懸念されたが沖縄から遠ざかっているようだ。 明日から強い日差しと供に南風が吹くだろう。

 このままこの風に乗って、気ままに旅でもしようか?

海想の最大の年行事となった感のあるイベントが終った。 今後 このレースだけに限らず海洋大国 琉球の先人達の残した大切なものを大事に、また高めていってほしいと願っています。ある人はサバニで九州までの航海をしたり 愛知万博が開催されているところまでの航海を計画している方も、ぜひぜひ成功をおさめてほしいと思います。エンジン音のしない海の上をすべるように流れ、エーク(櫂)を漕ぐ心地よさをぜひ体験してほしいものです。




 海想では、626日のレース開催まで毎週日曜日練習を計画しています。人数制限はありますが、乗ってみたい 漕いでみたい方は連絡下さい。一緒に気持ちのいい汗かきましょう。



                              海想  森

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